トムソン加工(ビク抜き)とは
トムソン加工は刃が付いた型でクッキーの型を取るように打ち抜く方法です。アメリカ人であるジョン・S・トムソン氏が設立したトムソン社の打ち抜き機から由来しています。東日本地域ではビク抜きと呼ばれておりますが、この名前はドイツのシュナイダー社のビクトリア印刷機を型抜きに改造した機械から由来しています。
トムソン加工はフィルムやシート、ゴムパッキンなど比較的薄くて柔らかい素材の打ち抜きに使用されていますが、厚みが1mm以上の硬い樹脂や金属など、はさみで切れないような素材の加工には適さない場合があります。切断だけではなく、箱を組み立てるための折り曲げ線を入れるスジ入れや、ミシン目を入れる加工も可能です。
トムソン刃で素材をカットすると、素材がトムソン刃に引っ付くことがあります。これを防止するため、トムソン刃の周りにゴムを付けてその反発で素材が外れるようにします。素材の厚さによって使用するゴムの仕様は異なります。より厚みのある素材を加工する際は、厚みのあるゴムを取付けゴムの反発力を増やし、より大きな力で素材を外すようにします。
トムソン加工のメリット・デメリット
メリット
型が繰り返し使用できるので、製品のランニングコストが抑えられます。トムソン型の場合、木型に金属の刃を埋め込むような構造のため、型の製作費用は金属を全て削ったものより安くなります。トムソン型の変更は比較的容易で金属総削りの金型よりも製作期間が短いため、短納期に対応することも可能です。
デメリット
硬い材質の樹脂板や金属の加工はできず、あくまでも紙や樹脂のシート、金属箔の加工に限定されます。また鋭角や細かい形状は厳密に再現できず、角部には最低2mm以上のRを付ける必要があります。また、2mmを下回る小さい穴は加工できない、スジ入れは山谷の混在ができず、直線のみの加工となる、などの制約があります。
刃型の種類
トムソン加工で使用する型の種類はトムソン型と彫刻型とピナクル型の3種類です。
トムソン型(ビク型)
トムソン型(ビク型)とは木に彫った溝の中に鋼の刃物を埋め込んだ型のことです。木の素材は加工性が優れたシナノキや接着性が良いマカンバ、保存に効くラワンが使われます。木材以外ではアクリル板が使われることもあります。刃は一枚板を曲げて埋め込むため、刃同士のつなぎ目の部分は打ち抜いた材料にわずかな段差として残ります。他の型よりも短時間で製作できるため、試作品に使用されることが多いです。
トムソン型を製作する流れは次の通りです。
- 板を用意し、刃を差し込む位置をレーザーでカットします。
- 平たく薄い刃物を準備して曲げます。曲げる機械は、トムソン刃専用の抜型用自動刃曲げ機を使用します。曲げるだけではなく、刃のブリッジ加工や枕切・角切り、ミシン加工もこの曲げ機で行います。
- 曲げた刃物をハンマーでたたいて板に埋め込みます。日本における一般的な刃のサイズは厚さ0.7mm、高さ23.6mmです。これを18mmのべニア板に埋め込むと5.6mm刃物が出る計算になります。刃は両面を加工した両刃や片面のみ加工した片刃、刃の角度などを選定します。
- 刃の周辺に材料を切り離すためのゴムを挿入します。
彫刻型
NC旋盤などの加工機を使用して、金属の塊を刃と土台の部分に切削加工した型のことです。刃と型が一体で刃のつなぎ目がないため、トムソン型より精度の高い打ち抜きができ、型の耐久性が良くなります。刃の高さに制限がないため、ピナクル型よりも板厚の大きい材料を加工できます。一方で金型の製作費用が高くなり、製作期間が長いため、試作加工よりも変更頻度が少ない量産加工に適しています。
ピナクル型
ピナクル型は薄い板と刃が一体化したものです。「ピナクル」は塚谷刃物の腐食刃の商標で、他メーカーで製作した刃は、別のメーカーの名称もしくは腐食刃と呼びます。刃の部分にマーキングをしてそれ以外の領域を腐食させて取り除いたあと、刃の箇所を鋭利にして型を製作します。トムソン型のような刃のつなぎ目はありませんが、刃の高さに制限があるため、厚みのある材料は加工できない場合があります。トムソン型より高い精度を狙うときに有効です。
他工法との比較
打ち抜きプレス
打ち抜きプレスとは金型をプレスして打ち抜く方法です。打ち抜くパンチと、パンチと同じ形状の穴が開いたダイによって打ち抜きます。打ち抜きプレスは金属を切削した金型で打ち抜くため、精度は打ち抜きプレスのほうが良くなります。トムソン型では±0.3mm、彫刻型で±0.1mmが目安でそれ以上精度が必要である場合はプレスを選択する場合があります。
使用する材料として、プレス機では金型の形状やプレスの圧力に応じて、硬い板金から柔らかいフィルムまで幅広く対応しています。トムソン型は紙やフィルムなど比較的薄くて柔らかい材質に対応しています。金型の価格面では、プレス機に使用する金型の製作費用が数十万かかる場合があるのに対して、トムソン型(木型)の場合は数万円で済みます。
プレスは金型の精度が高く、耐久性があるため、大量の生産に向いています。トムソン加工はプレス機よりも金型変更の自由度があるため、比較的多品種小ロットの生産に向いています。
レーザー加工
レーザー加工は、光の周波数を上げて収束させ、一点に照射することで対象物を溶かして加工する方法です。金型を必要とせず、テキストや図形、レースカーテンのパターンなどの、より複雑な形状の加工ができます。一般的に厚さ30mmまでの金属が加工できるため、トムソン加工よりも厚みのある材料に対応しています。レーザー加工ではレーザーを照射するために酸素ガスや窒素ガスなどのアシストガスを吹き飛ばす必要があります。そのためガスを購入しなければならず、それにかかるランニングコストが発生します。また、レーザー加工によって、粉塵の発生や臭いがします。加工する素材の材質や加工する頻度、周辺の環境に応じて集塵脱臭装置や簡易排気ブロワーなどの排気装置が必要になる場合があります。
ブッシュ抜き
刃が付いた金型を固定して、もう片方から高圧で押し付けることで約500枚の大量の紙を一度に型抜きする方法です。トレーディングカードやダイカットメモなどの綴りものに用いられます。四角や丸型のような角部が少ない単純な形状の加工に向いています。一回の工程で大量の抜き加工ができる反面、耐久性の高い鋼型が必要で、その分、型代がかかります。
ポンス抜き
ポンス抜きは重ねた紙の上にクッキーの型のような刃物が付いた金型を置き、加圧して紙を型抜きます。封筒の窓抜き加工によく使用されます。方法はブッシュ抜きと似ていますが、ブッシュ抜きとの違いは手動で操作することと、より複雑な形状に対応できることです。ただし一度に加工できる枚数は10枚~20枚ほどとブッシュ抜きより少なくなります。型代はブッシュ抜きよりも安価で大きいサイズに対応していますが、トムソン型よりも高価です。そのため、製品1個あたりの作業時間や精度はブッシュ抜きに劣ります。
エキセン抜き
エキセン刃と呼ばれる封筒の角を抜く刃を上下に動かし一度に大量の紙を加工する方法です。主に封筒の展開サイズの切断に用いられます。トムソン抜きや他のプレス機のように周囲の材料を残す必要がなく、四隅を切り落とすだけで加工できる場合もあるため、一枚の紙に対して捨てる領域が少なくなるのが特徴です。一度に300~500枚ほど加工できます。
トムソン打ち抜きに向いている製品例
紙
包装箱や牛乳パック、ケーキを入れる箱はトムソン加工が用いられます。単に箱を展開した形状の通り打ち抜くだけではなく、折り目を入れることで立体的に形を作るための加工を行うことができます。トムソン打ち抜きではシールの貼る部分だけカットして、台紙はカットしない使い方もできます。
ゴムシート
液体やガスの漏れを防ぐパッキンや、断熱材、緩衝材、防音材などのゴムシートの打ち抜きに適しています。これらのゴムシートは土木建築や車両・船舶などのさまざまな工業製品に使用されています。
サンコー技研のトムソン打ち抜き
「打抜くコト」のトータルサービス
サンコー技研ではお客様の希望する製品の材質や形状、求める精度、生産台数を「打抜くコト」のトータルサービスによって解決します。通常できないと考えている案件でもまずはご相談ください。
金型設計から打ち抜きまでワンストップ対応
サンコー技研ではトムソン刃や彫刻刃、ピナクル刃の設計から量産対応まで一気通貫した、「打ち抜きによるモノづくり」に対応しています。ご要望の形状に応じた最適な加工方法や各種刃の選定に関して実績があります。
幅広い対応素材
サンコー技研ではフィルム状の薄いものから厚みのある特殊素材まで、幅広い素材を加工した実績があります。
対応可能素材(一例)
- 樹脂:PEEKシート・ポリイミド・カプトン・スーパーエンプラ・高機能樹脂シートフィルム
エポキシガラス(ガラエポ)・紙フェノール(紙ベーク)・ベークライト
フッ素樹脂シート・PTFE・多孔質シート・PET・PEN・ルミラー
光学シート・反射シート・拡散シート・レンズシート - 非鉄金属:銅・アルミ・ニッケル・SUS・チタン・マグネシウム・金・銀・クラッド材・薄板電磁鋼板・ケイ素鋼板
- その他:カーボン素材CFRP・CFRTP・不織布・メッシュ・金属繊維・スーパー繊維(ケブラー・アラミド)
あらゆる厚みに対応
トムソン加工の種類に応じて加工できる厚みが異なってきます。サンコー技研ではご希望の素材、形状、厚みから加工方法や型設計のアドバイスが可能です。
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